着物の衿の汚れを防ぐ実用的な「半衿」と着物を重ねているように見せて色の重なりを楽しむための「伊達衿」。この似て非なる2つの小物は、着物好きなら凝らずにはいられないものです。半衿と伊達衿についてくわしくみていきましょう。
Contents
■半襟とは?
1.半襟とはどんなものか?
半襟は長さ1~1.1mで幅は15cm程度の1枚布で出来ています。
半襟は、お化粧などで汚れやすい着物の襟の汚れを防ぐもので、長襦袢の襟に縫い付けて使います。どうしても汗や食べ物などで汚れやすいため、普通は着物を着かえるたびに付け替えます。
顔まわりを囲む半襟は、着物とのコーディネートと顏映りとのバランスを考えながら取り合わせを考えます。この取り合わせの妙も着物を着るだいご味の一つとして、着物上級者が競って凝るところでもあります。
成人式で着る振袖などには、刺しゅうを施したものや様々な色柄物など楽しいものがたくさんあります。
しかし、もともと半襟は汚れ防止が前提ですから、半襟が誕生した初期のころは、色は黒で汚れが目立たない様になっていました。半襟が着物のおしゃれとして人気が出たのは、明治以後といわれています。そして大正時代から昭和時代初期にかけて、さまざまに趣向を凝らした半衿が登場するようになりました。その代表である竹久夢二の「港屋絵草紙店」で売られた半襟は当時の女学生はじめ女性たちのあこがれの的でした。
2.半襟とは必ず付けるものなのか?
半襟は全ての着物に必要です。現在の着付けでは、浴衣以外で半襟がない状態着物を着るということはまずないでしょう。また、この半衿がないと、衿芯が入れらないため整ったきれいな衿になりません。
■伊達衿とは?

1.どんなものか?
伊達襟は、別の名を重ね襟ともいいます。
伊達襟の大きさは長さ1.2~1.3m前後、幅は10~12cm程度の裏地付きの二重仕立ての布でできています。
着物の襟に直接重ねて、何枚かの着物を重ね着しているように見せるために使います。半襟にも着物を一層華やかにする効果がありますが、伊達衿をつけると着物と半襟の間にもうひといろ色が入ることになるため、とても着物の胸元が華やかになります。
たいていの伊達衿は、半襟よりも厚手のしっかりした布地でできており、着物と半襟の間でもはっきりと目立つように艶があって鮮やかな色合いものが多くなっています。
半衿と着物のコーディネートに、さらにもう一色加えることになり高度な色合わせのテクニックが必要です。伊達衿の色の選び方の基本は帯揚げや帯締めの色に合わせたり、帯の中の柄の色に合わせたりします。フォーマルな着こなしの中ではなるべく着物や帯の色と同調するような色を選び、統一感を重視した方が場の雰囲気に合った着こなしになります。
本来は着物衿に直接つけるものですが、「着物に針を刺して穴をあけたくない」という理由で長襦袢につける場合もあるようです。
2.必ず付けるものなのか?
伊達襟は、半襟とは異なり、必ずしも必要なものではありません。着物で色合わせ、重ねを楽しむ装飾的な用途に使う小物になります。
まとめ
いかがでしたか?着物用語の中でも、使い分けがむずかしい「おしゃれにも役立つけれど汚れ防止のための衿」である半襟と、「純粋にオシャレのための衿」である伊達衿。半襟と伊達衿は似ているようで、このようにはっきりと違いがありました。半襟も伊達衿もそれぞれに着物の着こなしの中で役割があり、それぞれを合わせる面白さが着物好きを夢中にさせるのです。ぜひ半襟と伊達衿を着物コーディネートを楽しむ小物として活用してみたいものですね。